ゆる読書会 参加者インタビュー Vol.4 なおこさん(後編)
2019年ごろからゆる読書会にご参加いただいているなおこさんにインタビューしました。
前編ではスペインに行くきっかけやメキシコへ引っ越すことになった経緯を中心に、盛りだくさんななおこさんの人生についてお伺いしました。
後半では2023年に経験されたがんのことを中心にお伺いします。
お話を聞いた人 なおこさん
1972年生まれ、千葉九十九里浜出身。キューバ、スペインを経てただいまメキシコ在住です。
猫、旅命。
前編はこちらです。
思いもよらないがん宣告
—— 人生に影響を与えた本ってありますか?
今日その話をしなくちゃと思って用意してたんです。西加奈子さんのくもをさがすです。
—— すごく最近の本ですね。
そうなんです。私、この本の発売日の次の日にがん宣告だったんですよ。
メキシコで働き始める前に、日本で健康診断を受けたんです。実家の近所の病院に行って。それでマンモグラフィーをやるんですけど、そしたらもう、担当の人がエコーを見た瞬間に「もうがんだよ」って言うぐらい、見るからにがんだったんです。
普通そういう検査の先生ってすぐに分かっても言わないじゃないですか。なんかこう、長く見たりとか、 怪しいなっていうのは言っても、「絶対そうだよ」なんてこと言わない。でもその先生は、「もうね、君は95%がんだから、メキシコに行くのはちょっとやめて、すぐ治療しなさい」って。
で、もうその場でがんセンターの予約を取ってもらったんです。がんセンターは混んでるんで、大体1カ月は待つよって言われたんだけど、3週間で取れたのかな。
—— その待っている3週間、ツラくなかったですか?
1日目が1番ツラかったかな。だって、もう何の気なしに検診に行ったらがんって言われて。 本当に1時間ぐらい真っ白になりました。いい先生だったんで、そこで(治療について)すごく説得してくれて。
でも、がんセンターに行くまでの3週間にメキシコに行ったんですよ。メキシコに行って準備して働いてたんですよ。悶々としてもしょうがないと思って。
で、3週間後にがんセンターに行きました。それでもう1回、細胞診って言うのかな。がんのタイプの検査とかもして。その結果を聞きに行くのが1番怖かったですかね。
でも、がんセンターに行ってすぐ、結果が出る前に、そこの先生も「残念ながらがんだと思います」って言ったんですよ。だから、もう本当に、よっぽどわかりやすいがんだったんです。
通常は検査の結果を待ってから手術の準備をするんですけど、先生も「待たなくていい。もうがんだっていう想定で、手術の準備を早くしましょう。早く手術して、早く治った方がいいから。もう今日から始めましょう。」って言って。
それでその日は大変!
なんかね、手術の準備の検査もすごい大変なんですよね。 「もういいですよ〜採血もやって、レントゲンもやります。」とかって言ったら、あっちは刺されて、こっちは刺されて、それで、もう痛くて。
時差ボケでふらふらになってる時に「じゃあ次は手術の準備で採血します。10本抜きます。」って言われたんですよ。「10本!!!」って。一瞬「10本はちょっとどうしようかなやっぱり」みたいな笑。
で、フラフラしながら家に帰ったのが2023年のゴールデンウィークでした。
がん闘病の支えになったのは本だった
検査の結果が出るまで1週間ぐらい、姉がいる青森でゆっくり休んでいました。温泉に行って、湯治して。 そこでたまたま「くもをさがす」のことを知ったんです。
それまでにサラバとか、西さんの本を読んだことはあったんですけど、正直あんまりピンとこなかったんです。でも「くもをさがす」は海外で乳がんで、しかもそのとき発売になってから4、5日しか経ってなかったのかな。「もうこれ私が読むしかないでしょ!」と思って読みました。
どういうタイプのがんで、次からどういう治療方針があるのか、っていうのを全部それで勉強して。そこで初めて怖さを知ったんです。私、西さんの本を読むまでは何にも考えてなかったんですよ。それはそれでよかったのかもしれませんけど。
もう何回も繰り返し読んでました。最初に3時間ぐらいでわーっと読んじゃって、その後は治療が来るたびに読んで、リアルタイムで一緒に進行したような感覚でした。
わたしは抗がん剤をやらなかったので、すぐ元気になってるんですけど。でも、放射線治療はすっっっごいきつくて。そんな時にも「そうだ本でもこう言ってた!」みたいな。たくさんの人が共感してる本なんでしょうけど、「実際に同時進行でやってきた私には敵わないでしょ。」ってちょっと思ってます。