ゆる読書会 参加者インタビュー Vol.4 なおこさん(後編)
アップダウンの波に寄り添ってくれたのは重い本
今でも時々パラパラっと読んだりしますし、YouTubeで西さんが他の人と対談なんかしてたりするのを見たりします。
で、何が言いたかったかというと、西さん自身が、苦しかった時にすごい本を読んでたって書いてあるんですよ。西さんが読んだ本のリストが書いてあったんです。私もその中から気に入ったものを引っ張り出して、入院中とか、 放射線の時とか、本当に動けない時に読んでました。

その中の新潮クレスト・ブックスの「波」っていう本が、もうすごかったです。海外のもので重めのやつなんですけどね。インドネシアの津波の時に家族全員を亡くした女性が書いた日記です。 もうツラすぎて読めない感じなんですけど、素晴らしかったです。
そう、だから「くもをさがす」自体も良かったんですけど、「くもをさがす」に載ってる読書リストが私にはものすごくよかった。
治療している2カ月ぐらいはアップダウンの時期が続きました。抗がん剤やるのかなって考えちゃって夜眠れなくて、カツラの見本を見たりして。
わたしは部分摘出だし手術はそんなに重くはなかったんです。でも、ドキドキして眠れなくなったりして。当日は午後の手術で1日食べられないし。でも、そんな中でも普通に本は読んでました。

ポール・オースターの幻影の書って読んだことあります?ポール・オースターの名作だと思うんですけど、それを手術前に読み始めちゃって。すごい夢中になっちゃって、手術に呼ばれた時に「なんで呼びにくるのよ!」みたいな。
—– 笑。「早く手術終わって、続きを読まなければ!」ってね。
そう笑。付き添ってくれた姉によると、1時間半ぐらいで手術は終わったみたいです。その日はボロボロですよね。でも部分摘出ってわりと早くて、夜中には麻酔が切れて、痛み止めを飲んで、次の日の朝にはみんな歩いてる。朝ごはんも普通に食べて。で、また続きを読みました。
ポール・オースターのこの本は、最高傑作だと思う。もうすっごいよかった。私は本を捨てちゃうタイプなんですけど、また読みたいなと思って、これはちゃんと家に置いてあります。

がんへの対処法は人それぞれ
—– ツラい時に重めの本を読むと、さらにツラくなりそうだなって思うんですが・・・
なるほどね。でもこれね、本当にがんになってみて初めてわかったんですけど、対処方法はね、人それぞれ。
例えばがんになって、ブログを始める人もいます。ちゃんと記録して公開して。そうすると同じような状況の人と知り合いになれて、 共感できるわけじゃないですか。それが欲しいっていう人もいます。わたしはもともとマメじゃないから、絶対できないタイプなんですけどね。
—– なるほど。

私の場合は人からごちゃごちゃ言われるのが本当に嫌になって。なんか、意見されるのはね、すごいイラっとするんですよね。
乳がんってポピュラーじゃないですか。小林真央さんとか、有名な方もいる。だから知っているような気分になって、まあ「ああじゃない、こうじゃない」って言うわけです。 でも実際はそれがレアケースだったりするわけです。でも、そういうことも知らないじゃないですか。私もがんになったから知ってるだけで。
当時はがんになったことをそんなに人には言ってなかったです。っていうか、しゃべれなくなっちゃって。今はこんなにしゃべってますけど。その時は人と全然しゃべりたくなくなっちゃって。

そんな中でも、いい友達もいっぱいいるんで「余計なこと言わないだろうな」っていう友達には会ってましたけどね。 何も言わずに支えてくれました。
本も軽い方が読める人もいると思いますし、読めなくなる人もいるかもしれないです。私は返って重めの本の方が読めたかな。 本当に人それぞれだと思いますね。
—– たしかに。
重い3冊ですみません。だけど、この話をしないとなと思って。私のケースはね、大変でしたけど、それでも今元気じゃないですか。本当にありがたいです。
このインタビューで、どなたかが元気になってくれたら嬉しいです。私はまめに自分では書けないんで笑。
—– 貴重なお話をありがとうございました。
お話の中で出てきた本
くもをさがす/西加奈子
波/ソナーリ・デラニヤガラ
幻影の書/ポール・オースター
インタビュアー げんだちょふ

子育てと仕事と趣味の「ちょうどいい」を考える転妻。 2019年にゆるさと安心感がウリのオンライン読書会【ゆる読書会】を開始。2020年に娘を出産。2021年からオンラインアシスタントとして開業。