ゆる読書会 参加者インタビュー Vol.4 なおこさん(前編)

現地採用のリアル〜駐在員との壁

もちろん駐在員の人たちも助けてくれないってことはないんですけど、彼らは彼らで、300%ぐらいの仕事量があるんですよね。みんな自分の仕事量がすごすぎて、自分の世界に入ってるって感じかな。

—— 駐在員ってやること多いですもんね。

私の立場(現地採用の日本人)って、系列会社の中で1人しかいないんですよ。駐在員から見るとライバルでもないし、政治的な競争の中には入らないけど、仕事は同等に与えられる。妙なポジションなんですよね。

—— 確かにそういった立場だと、いろいろ相談されやすいかもしれないですね。

逆にそうかもね。メキシコ人に聞くより楽だから、他の会社の駐在員の人まで私にどんどん連絡してきたりして。「なおこさん、これ教えて」「いや、私の会社のことじゃないんですけど」みたいな。結局、言いやすいんですよね。

—— 日本語が通じる人に頼っちゃいますよね。駐在員の人って、現地語が必ずしもできるわけじゃないですしね。

そうなんです。駐在員の皆さん英語はペラペラですし、現地スタッフもリーダーやオフィス勤務の人は英語が話せます。それでもやっぱり伝わってないなって思うこともあります。

それで半分通訳で雇われたみたいなところもあります。「いつでも通訳だけになりますよ」って嫌味言って、イヤな顔されてますけどね笑。すみませんね、駐在員の奥さんにこんなこと言って。(インタビュアーのげんだちょふは2019年頃、駐在員の夫に帯同。)

—— いやいや、おっしゃること分かるんで笑。

駐在員の方々も、私とは違う意味でみんな大変なんだと思います。短い任期の間にやるべきミッションが多い。もう、こんなに仕事しなくてもっていうくらい。 

みなさん、生活を楽しんでる時間はないってとこじゃないですかね。ときどき家庭サービスするぐらいがいっぱいいっぱいなんじゃないかな。

今は中断しているが、再開したい翻訳

—— ここまで全く本の話をしていないんですけど、本は昔から好きでしたか?

好きでした。親が商売をやっていてあまり構ってもらえなかったんで、ずっと1人で本読んでるタイプでしたね。本を与えておけば静かにしてるしっていう笑。

私は短大の文学部を卒業してるんですけど、もっと勉強したくて、最近まで法政大学の文学部に通信で入ってたんです。でも(今は仕事で)忙しすぎて無理だろうと思って、さすがに辞めました。

やっぱり課題が出ると自分では読まないような本ばっかり読むじゃないですか。それがやっぱり楽しかったですね。翻訳をやる足しにもなるし。向田邦子を翻訳しようかなと思っていろいろ準備してたんですけど、メキシコに来て、あと病気にもなって、退学したんです。

—— 文学部というのは、日本文学ですか?

日本文学です。あっ、海外文学も読みますよ。ラテンも好きです。メキシコにもいい文学がいっぱいあります。 

メキシコに来る前は「引っ越ししたら翻訳した本を持って営業しよう」なんて思ってたのに、もう文学から離れた生活をしちゃってます笑。

—— 翻訳した本があるんですか?

そうなんです。スペインにSATORI(サトリ)っていう日本文学を専門で訳している小さい出版社があるんですね。

有島武雄と岩野泡鳴と、あと藤沢周辺のアンソロジーで、全部で5冊だけなんですけど、長い時間をかけて訳しました。本当に時給にしたら一円にもならないみたいな感じなんですけど、好きでやってます。1年ぐらい前にお仕事をもらって宮本百合子を訳してたんですが、 中断しています。落ち着いたらこっちでもやりたいですね。

でもまあ去年は「体を治して引っ越しする」っていうのが目標だったんで、とりあえず達成しました。

—— いや、目標って!!よくここまで来ましたねって感じじゃないですか。

ですよね。なんかもう自分もあんまりこう、あれもできてない、これもできてないとか言うのは止めようと思ってます。

—— うん、本当にそうですよ!

なおこさんがスペインで働き始めた経緯やメキシコに引っ越すことになった理由、現地採用での働き方など、さまざまなお話をお伺いしました。後編ではなおこさんが2023年に経験したガン闘病についてお伺いします。


インタビュアー げんだちょふ

子育てと仕事と趣味の「ちょうどいい」を考える転妻。 2019年にゆるさと安心感がウリのオンライン読書会【ゆる読書会】を開始。2020年に娘を出産。2021年からオンラインアシスタントとして開業。

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