ゆる読書会 参加者インタビュー Vol.5 なおさん

今回は2021年ごろからゆる読書会に参加されているなおさんにお話を伺いました。本にまつわる思い出やお仕事についたきっかけ、オンラインでの読書の楽しみ方など、さまざまにお話してくださいました。

お話を聞いた人 なおさん

もうすぐ還暦を迎える、長崎在住の介護福祉士です。好きなもの、海、読書、お笑い。はまっていること、月一度のボランティア(乳幼児への絵本の読み聞かせ)です。

本の思い出。好きになったきっかけは朝読書。

—— 数年前から読書会に継続的に参加してくださっていますが、本は小さな頃からお好きだったんですか?

一番小さい頃の記憶だと、幼稚園から毎月送られてくるキンダーブックですかね。それを楽しみに読んでいました。でも、それほど絵本が大好きっていう子供ではなかったです。

—— いつから本がお好きになったんですか?

一番のきっかけは学校の朝読書です。小学校の頃、朝の始業前に5分か10分ぐらい本を読む朝読書の時間があって。

みんな学級文庫から本を選ぶんですけど、その時たまたま教室に行くのが遅れて。そしたら全く違うタイプの2冊しか残ってなかったんですね。

その2冊というのが、佐藤さとるさんの「だれも知らない小さな国」というファンタジー小説と、田中正造と足尾鉱毒事件のことを書いたドキュメンタリーだったんです。

この2冊の本を読んで、「あー読書っておもしろいなぁ」と思ったのがきっかけかもしれません。

—— 後者はけっこう重めの題材ですね。両方とも読まれたのですか?

そうですね、2冊借りて両方とも読みました。毎朝本を読まないといけなかったんで、半強制的に読まされたというところはありますが、すごく印象に残っています。

どちらかというと「だれも知らない小さな国」の方が感情移入はしやすかったですね。葉っぱの裏にコロボックルという小人が住んでいて、彼らの世界を大人が壊そうとするんですが、少年が一緒になって隠し通す、というような内容でした。

田中正造さんの足尾鉱毒事件の方は、「どんなに頑張ってもダメなものはダメだった」みたいな、無力感を子供心に感じたことを覚えています。

—— 小学生で無力感を感じるとは・・・!(驚)

ドキュメンタリーはきれいにまとまってないからおもしろい

—— 小学生のころから今まで、ずっと継続して本は読んでいましたか?

一度は途切れてしまったんですが、高校生の時に漫画がはやっていて、それでまた読むようになりました。

当時読んだ中で印象に残っているのは、山岸凉子さんの日出処の天子(ひいずるところのてんし)という作品です。今でいう、ボーイズラブですかね。蘇我入鹿と聖徳太子の恋愛漫画です。歴史的事実とは違うんですが、内容が面白くてハマってしまいました。

その後に黒岩重吾さんが書いた歴史の本も読むようになったりして、だんだんと歴史に興味をもつようになりました。

—— 読書会でなおさんが紹介されている本を振り返ると、いろいろなジャンルを読まれてるイメージがあります。

そうですね。歴史ものや小説も好きですが、ドキュメンタリーも好きです。どこかに旅に行った時のお話ですとか。

例えば、アラスカに移住した写真家の星野道夫さんが書かれたエッセイが好きですね。アラスカの自然や野生動物を撮影していた写真家さんなんですけど、最後は熊に襲われて亡くなられてしまいました。写真も文章も、すごくすてきです。

あと、米原万里さんの嘘つきアーニャの真っ赤な真実も好きですね。米原さんがプラハに住んでいた幼少時代のことを書かれたエッセイです。

最近読んでおもしろかったのは中村安希さんのインパラの朝です。中東やインドなどをバックパッカーで旅して回った684日間の話です。深夜特急みたいな雰囲気でおもしろかったですね。

ドキュメンタリーを読むと、本当にあった物語がやっぱり何よりおもしろいなと思います。作られたものではなく、キレイにまとまってないところが魅力的です。

—— 実際に行ってみたいと思いますか?

それはないですね笑。私自身、娘が住んでいるところに行くぐらいで、そんなに旅行はしないです。

行く機会がないから読みたいのかもしれないです。知らないことを知れる面白さがあるというか。知らないことを知るには本って手っ取り早いですよね。

子育て中に介護の資格を取得。きっかけは実生活に生かすため。

—— お仕事は何をされているのですか?

看護助手です。看護師さんの手助けや、患者さんのお世話をする仕事です。医療行為はしないんですが、お風呂に入ってもらったり、トイレの手伝いをしたり。患者さんの生活を支えるみたいなイメージです。

—— そのお仕事はいつ頃からされているんですか?

子供が小学校に上がったぐらいからですかね。

最初は高校卒業して事務系の仕事をしていたんですが、結婚後、子育てで10年ほど家事育児に専念していました。子供が幼稚園に上がった後に勉強を始めて、ヘルパー二級の免許を取りました。

—— 勉強をしようと思ったきっかけはあるんですか?

私が一人っ子で、両親の面倒を見る人が私しかいなかったので。両親のお世話をするのに介護関係の勉強が役に立つと思ってヘルパーの勉強を始めました。

別に好きな仕事では全くなかったし、今でも好きかと言われるとそんなにアレなんですけど・・・。結果的に勉強しててよかったなと思います。

もう両親2人とも亡くなったんですが、介護保険の仕組みなど、いろいろ教わってかなり役立ちました。やっぱり全く知らないとどうしようもできないですし。

—— 子育てしながら勉強されたんですね。ちなみにお子さんは何人いらっしゃるんですか?

3人です。もうみんな巣立って、楽させてもらってます。

—— 子育て中に何か始めようと思っても行動に移すのが面倒だったり、不安に思う人もいるかと思うのですが、それはなかったですか?

わたしの場合「必ずやらなければならない」と小さい頃からなんとなく思っていたので、特に不安とかはなかったですね。

実際、介護関係は引く手あまたで今の仕事にも結び付きましたし、やってよかったなと思います。

オンラインをうまく活用して読書を楽しむ

—— 介護関連のお仕事はとても忙しいイメージがあるんですが、本を読む時間はありますか?

夜勤とかもあって大変なこともあるんですが、もう慣れました。体が疲れた時はもう読まないですけど、休みの日とかあんまり疲れてない時は読みます。

—— なおさんはずっと長崎にお住まいとのことですが、地元で読書会などのサークルに参加することはありますか?

コロナ前にはありました。月に一回程度、定期的に喫茶店などで集まって行う読書会に参加していました。

でもコロナになって、私が医療関係の仕事をしていることもあってなかなか行けなくなって。その後、その読書会で扱われる本がビジネス系に変わったこともあって、足が遠のいてしまいました。

—— 本はどうやって選びますか?

知人に勧められたものを読むことが多いと思います。本好きの人がブログで紹介している本を読んだりもしますね。「わたしも読みました」ってコメントを返したりすることもあります。

さきほど紹介した中村安希さんのインパラの朝は、フェイスブックグループで紹介されていたので読みました。

—— SNSをうまく使いこなしてるんですね! なおさんの年代だと、まだまだインターネットに抵抗がある方も多い印象ですが・・・。

そうですかね?でも、読書以外のことに関してはあまり使ってないです。一点集中で頑張ってます笑

—— ゆる読書会もネット上のコミュニティですが、ネットでつながることに抵抗はなかったですか?

抵抗よりも好奇心の方が勝ってたかも?

ゆる読書会さんに参加する前に、別のオンライン読書会にも参加させてもらってたんです。今も参加しているんですが、そちらに初めて参加した時はものすごく緊張しました。東京の方が主催されているんで、「方言が出たらどうしよう」とか笑。

そこで少し慣れてきたころにゆる読書会さんのことを知って、「女性だけだし、オンラインにも慣れたから大丈夫だろう」と思って参加しました。

娘がSNSで知り合った人とコンサートに行っているのを見ていたのも大きいかもしれないです。横目で見ながら「すごいなぁ〜でも用心しなさいよ」と思いつつ、「わたしも理解しないでいいのかしら?」みたいな。

——ご家族の影響は大きいかもしれないですね!

本を友達にすれば助けてくれる時がくる

—— 読書をしてて「よかったな」と思うことはありますか?

わたしの場合は勉強というより娯楽の要素が強いです。なので読書は「元手のいらない娯楽」ですかね。

本って図書館だったら無料で借りられるじゃないですか。仕事で大変なことがあったり気分が落ちたりしても、本を読めばスッパリ世界が変わる。息苦しい世界から、他の空間に逃げられるというか。

—— ストレスがたまると本を読むタイプですか?わたしはそうです笑

そうですね。本を読んでハラハラドキドキして、嫌なことを忘れてストレス解消するタイプです。

—— 読者の方に「これだけは言いたい!」ということはありますか?

本が好きな子どもがいっぱい育ってほしいなと思っています。子供にボランティアで絵本を読んで読み聞かせをしてるんです。小さいうちに本を友達にしてたら、大きくなってから自分を助けてくれる場面がきっとあると思うので。

—— 絵本の読み聞かせ、いいですね!何をきっかけに始められたのですか?

フェイスブックで地元で絵本の読み聞かせをしているグループを見つけて、「ちょっと見に行っていいですか?」と連絡したのがきっかけです。それからもう7〜8年ぐらいですかね。

月に1回程度、公民館のようなところで開催しています。0歳〜1歳ぐらいの子どもが対象で、「赤ちゃんの時にこんな風に読み聞かせしたら楽しいよ〜」というのをお伝えする感じです。かわいいですよ。

—— そういう場があるとお母さんたちもうれしいと思います。

身近なところで楽しむのが好き

—— なおさんは読書会では穏やかな印象でしたが、お話を聞いて、とても行動力がある方だなと感じました。

すごく大きいことはできないんですけど、小さな、誰でもできそうなことはやってみたいと思いますね。自分に近いところでワクワクしたり、わちゃわちゃするのが好きなのかもしれないです。

—— 本日はすてきなお話をありがとうございました。

お話の中で出てきた本

佐藤さとる/だれも知らない小さな国

堀切リエ 文・石井勉 絵/田中正造 日本初の公害問題に立ち向かう

山岸凉子/日出処の天子(ひいずるところのてんし)

星野道夫/イニュニック 生命―アラスカの原野を旅する

米原万里/嘘つきアーニャの真っ赤な真実

中村安希/インパラの朝


インタビュアー げんだちょふ

子育てと仕事と趣味の「ちょうどいい」を考える転妻。 2019年にゆるさと安心感がウリのオンライン読書会【ゆる読書会】を開始。2020年に娘を出産。2021年からオンラインアシスタントとして開業。

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